タカアシガニ(高脚蟹・学名Macrocheira kaempferi)は、十脚目・短尾下目・クモガニ科に分類されるカニ。日本近海の深海に生息する巨大なカニで、世界最大の現生節足動物である。カニ類の中では系統的に古い種で、生きている化石とよばれる。
ドイツの博物学者エンゲルベルト・ケンペルは元禄3年(1690年)に長崎出島に上陸。2年間の日本滞留の見聞を『廻国奇観』『日本史』に著した。その中で駿河湾の磯辺で遭遇した巨大な蟹を初めて紹介している。その後、日本初の女医であるオランダお稲の父親フォン・シーボルトは『日本動物記』を1839年にまとめたが、甲殻類を担当したデ・ハーンはこの蟹の学名を最初の発見者であるケンペルに捧げる。学名をマクロケイラ・ケンペリ、邦名をタカアシガニという。学名の「kaempferi」はケンペルのこと、「Macrocheria」は巨大なハサミを意味する。
全身が橙色だが、脚には白色のまだら模様が入る。脚は非常に細長いが、さらに成体のオスでは鋏脚が脚よりも長くなり、大きなオスが鋏脚を広げると3mを超え、ギネスブックには5.79mの記録があるとか。甲羅は最大で甲幅30cm、甲長40cmほどの楕円形で、盛りあがっていて丸い。
日本近海の固有種と言われていたが、生息域は岩手県沖から九州までの太平洋岸で、東シナ海、駿河湾、土佐湾である。1989年に台湾の東方沖で見つかっている。メスの方が美味しいという話もあるが、巨体の割にはあまり肉が多くない。味は上品だとか、大味だとか様々であるが、世界最大の甲殻類と言うだけで食べる価値はあるでしょう。
3m近い大きさのタカアシガニを「ジャンボ」と呼び、身はゴムのような硬さで食用には適さない。
甲羅部分におどろおどろしい顔を描き魔よけなどにし、静岡県沼津市では、稲の取り入れ時期に案山子の変わりに鳥よけなどにする習慣があり。「死人蟹(しびとがに)」、「平家蟹(へいけがに)」とも呼ばれていた。
静岡県御前崎では「面蟹(めんがに)」と呼び、魔よけにしており、海岸で子供を襲う超巨大なタカアシガニの絵もある。やはりどの地域でもタカアシガニの手足の長さと甲の形が奇妙に見えていたのだろう。
因みにタカアシガニはほかのカ二に比べて脚が長いため、前後左右どの方向にも自在に歩くことができる。
本作品は、大学院の修了制作として作成。世界最大の甲殻類の自在置物を作りたいというシンプルなコンセプトのもと制作。鋏の巨大な雄を作ったほうが題名には合っているが、脚と鋏の大きさのバランス、フンドシを含めたボディのシルエットの美しさを考慮して雌をモチーフにした。
脚や鋏はもちろん、フンドシや目、触覚、口などほぼ全ての箇所が稼動。全体を銅の打ち出しで作り、白いまだら模様を銀ロウ流し、全身の橙色を煮色で表現した。制作するに当たってモチーフは必ず手元に置くようにしているのだが。タカアシガニは伊豆の戸田港まで行き持ち帰りには売らないところ、必死の交渉と大将のご好意により持ち帰りを許可された。その節は有難うございました。